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現代の名仏師
黒柳奈未子(くろやなぎなみこ)

黒柳奈未子(くろやなぎなみこ)

「ひとりでも多くの方を仏縁に結ぶ、
親しみのある仏像の姿を目指しています」


作品のご紹介

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Profile

1983年
愛知県名古屋市に生まれる。
高校生の時に予備校の美術研究所に通った事をきっかけに、立体美術を始める。
2003年
東京藝術大学美術学部彫刻科 入学
2007年
東京藝術大学美術学部彫刻科 卒業
東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学保存修復彫刻 入学
2009年
東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学保存修復彫刻 修了
お仏壇のはせがわ賞 受賞
東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学保存修復彫刻 博士後期課程 入学
現同研究室博士課程在学

Interview

−昔から仏像彫刻に興味があった?

仕事風景母が奈良出身だったこともあり、幼い頃から奈良や京都に家族で出掛け、神社や寺院を参拝することが多かったです。でも、その時仏像に対して感じたのは、よく分からないまま怖いという意識が強かったように思います。
大学院に入って、仏像の修復や制作に関わる中で、畏敬される仏像もあれば、親しみを感じさせる仏像もあるということを知りました。特に修復に携わったことで、綿々と仏像を受け継ぐということの難しさや大変さを、身をもって体感しました。その中で、今まで守り続けた人々の祈りの重みを感じ、次第に仏像の持っている力に引かれていきました。

−仏像を作り始めたきっかけは?

学部2年生の時、東京国立博物館の企画展で八大童子を目の当たりにしたことが、仏像に関わることになったきっかけでした。あれほど生き生きとした彫刻が800年以上も前に作り出されていたことを知って、驚きと喜びで胸がいっぱいになったことを覚えています。
それから文化財の修復に関心を持ち、文化財保存学保存修復彫刻研究室に入学し、修復に携わります。その過程で、修了研究として高野山霊宝館蔵『八大童子のうち衿羯羅童子立像』の模刻制作を行いました。目的は主に、出来る限り当時と同じ方法・材料で仏像を制作し、追体験することで、先人の知恵や技を受け取り、消化し、それらを文化財の修復や今後の創作に生かすためです。

−学部の時はどのような作品を作っていた?

仏像ではなく、主に人物や動物などを粘土や石膏を用いて創作していました。作風は、良く言えばおおらかですが、悪く言えばおおざっぱ。ふとある日、これが自分の技だと自信を持って言えるものが何もないことに気付きました。いろいろ考えた末、まず苦手な木彫を克服したいという気持ちから、この研究室の門を叩きました。ここでいろんな先生や先輩に出会えたこと、とくに欄間職人の先生に出会えたことは、本当に幸運でした。いままで粘土ばかり触っていた自分では、考えもつかない手法で進んでいきましたし、漆や天然顔料など、新しく触れる素材すべてが新鮮で、自分のなかでがらりと、ものづくりの位置付けが変化していったのが実感できました。

−創作と、仏像制作、修復への態度は異なるのか?

私の場合は、それぞれ違います。創作の場合は、ルールに縛られる部分が少ないし、個性は出せるだけ出した方がいい。仏像制作の場合は、「模刻制作」と「新しい制作」に分かれます。模刻は創作とは逆で、個性をなるべく殺し、模刻対象に一生懸命付いていく感覚です。とても大変なのですが、模刻をすることで、道具の使い方、像の構造、制作の段取りを一つ一つ理解することが出来たと思います。その上で新しく仏像を作る場合は、綿々と続いてきた仏像の歴史があることが大前提ですから、自分の作品を作っているようで、実は自然と模刻で学んだ伝統的な形が目の前に表れてくるのだと思います。

−修復に関しては?

初めは文化財に触ることが怖くて、手を付けられずに何日も過ごしたこともあります。そうした私を見かねた先生から、「修復されたものを見て、もしかしたら君を批判する人もいるかもしれない。修復に完全な正解はないが、これに関して君ほど資料を集めてサンプルを作り真剣に考えている人はほかにいない。修復をせずにイメージだけで『本来の姿とは違う』と言ってくる意見におびえる必要はないのでは」と背中を押してもらったことがあります。それでやっと前に進めたのですが、それくらい責任の重いことをしているという自覚は忘れてはならないと思います。
 また修復に関しては、簡単に方針を決めることはありません。事前に調査を行い、依頼主と話し合い、仲間と話し合い、サンプルを幾つも作って準備を重ねます。その間に記録を常に取り、修復後には報告書を作成します。創作とも、仏像制作ともまったく方法論が異なります。
修復中に、仏像に直接触れることで、どんな人がどうやって作ったのか、一番近くでそれらを肌で感じ取れることは、修復に携わる人の、一番の幸せなのではと思います。

−これからどのような仏像を作りたいか?

子どもや赤ちゃんの面影を感じさせる、愛嬌のある姿が好きです。見たときに、ほっと一息つくことができるお像を作りたいと思っています。仏像の修復や制作をしているからか、ありがたいことに新しい仏像の依頼が幾つか来ていますので、卒業したら、もちろん作らせて頂きますが、さまざまな素材で創作もしたいと考えています。
博士研究として今作っているのが、矜羯羅(こんがら)童子と制多迦(せいたか)童子の想定復元模刻です。作りは、細部や質感まで手が行き届いており、作者の像に対する愛情を感じます。なので、そういったところも出来る限り再現したいです。

−自身の作品の特徴は?

今回、想定で復元彩色まで行う予定ですが、鎌倉時代の仏像彫刻を雲繝(うんげん)彩色まで復元するのは前例のないことだそうです。まだまだ未熟者ですが、彫刻だけではなく古典彩色の技術も身に付けようと今は修行中です。確かな技術があって、畏敬の対象と親しみのある仏像を作れるのだと思います。

−ありがとうございました。