仁王吽形像
釈迦如来像
毘沙門天像
赤ちゃんの無垢で純粋な存在、そのフォルムをモデルに一彫りずつ雑念を捨てて彫る
内なる我欲、雑念に捉われずに彫る
「赤ちゃんの無垢で純粋な存在は、この世で一番仏に近い存在です。その顔や手のフォルムは我欲の表れた大人の人間とは全く違います。私の仏像のモデルは、その姿、フォルムをそのまま大人(スマート)にしたものです」。 材木商の生家で育ち、子供の頃から木に親しんできた宇津野善光さん。立体像が得意で粗彫りが速く、これまで寺院の本尊や脇仏200体以上を造仏。しかし数度の大病でどん底を経験し、「今やっと、他の仏師さんと同じスタートラインに立てる思いです」と語る。一彫り一彫りに集中し、何も思惟せず、刀に成りきって一体化する、時間の観念を忘れて仏像を迎える。宇津野さんの至福の時間である。
宇津野善光(うつのぜんこう)
名古屋市中区に生まれる。(生家:材木商)
愛知県立愛知工業高校デザイン科卒業後、
家具デザイン会社に勤務。
23歳で名古屋の仏師 服部三文助に弟子入り
奈良、京都の古仏を研究、調査の為、独立。
以後、独学し各寺院の本尊・脇持を約200体造仏、現在に至る。重要文化財修復歴6回
月刊誌『宗教と現代』に『仏像彫刻入門』を連載。(5年間連載)
『よくわかる仏像の見方』JTB出版 監修
代表作 高野山真言宗 大本山金剛峰寺(尼僧専門道場の大日如来)
仏道修行にも通じる仏像彫刻の意識世界
「朝から昼までが10分か、15分に感じる一日。心が意識を超えた時間の観念のない一日、彫りだしてから完成の日まであっという間の一日が続いたら、素晴しい仏像が表れると思います」と語る宇津野さん。仏像彫刻もその時点では、瞑想・禅・真言・気功などで得るものと同じ仏道修行に通 じる世界を表現している。また刀と一体になった時、「意識が普段の顕在意識から潜在意識に入り、やがて純粋意識に到達する」とも言う。仏の顔や姿を表現する上で、誰にでも愛される無垢な存在の赤ちゃんをモデルにする仏師の本分であろうか。